2011/07/31

#187  ロンドンオリンピック(2012)に向けて (3)

日本のロンドン五輪・目標

当然、メダルの獲得状況がその指標とされています。…(その是非はさておき)…

「スポーツ振興基本計画」(2006年改定)では、オリンピックにおけるメダル獲得率が、夏季と冬季合わせて3.5パーセントとなることを目標としていました。このメダル獲得率とは、直近に開催された夏季及び冬季オリンピック競技大会におけるメダル獲得数の合計を、それらのオリンピック競技大会における総メダル数の合計で除したものです。金・銀・銅のメダル数の合計が「実施種目数×3」ではないこともありますが、計算上それほど大きな問題ではないので、以下では「総メダル数=実施種目数×3」で「メダル獲得率」を算出しました。

 3.43 ソルトレークシティー(2002)~ アテネ(2004)
 3.29 アテネ(2004)~ トリノ(2006)
 2.25 トリノ(2006)~ 北京(2008)
 2.58 北京(2008)~ バンクーバー(2010)

なお、現在、その位置づけがとても曖昧ですが、「スポーツ立国戦略」(2010年8月)において、新たな目標が設定されています。以下、引用します。

「今後の夏季・冬季オリンピック競技大会について、それぞれ過去最多(夏季37(アテネ)、冬季10(長野))を超えるメダル数の獲得を目指す。また、オリンピック競技大会及び各世界選手権大会において、過去最多(オリンピック競技大会では、夏季52(北京)、冬季25(ソルトレークシティー))を超える入賞者数を目指す。さらに、将来を見据えた中・長期的な強化・育成戦略を推進する観点から、各ジュニア選手権大会のメダル獲得数の大幅増を目指す。」

…大した違いはありません。分かり易くしただけなのでしょう。

2011/07/30

#186  ロンドンオリンピック(2012)に向けて (2)

五輪テーマソングの力

NHKの北京オリンピック(2008)テーマソングを覚えていますでしょうか?
もし、即答できた方がいらっしゃったら、かなりの“オリンピック通”です! 

  一番きれいな色ってなんだろう?
  一番ひかってるものってなんだろう? 

当時、どれだけ多くの人がこの歌詞から始まるMr. Childrenの「GIFT」を耳にしたことでしょうか……おそらく、練習中や試合前などに、この歌を聴くオリンピック日本代表選手も多かったと思います。

この歌に影響されたせいか、同大会において、メダル獲得後の日本選手のコメントに、「金メダルは獲れなかったが、このメダルの色は私にとって金色です。」というものが目立ちました。1番にはなれなかったが、ベストを尽くした結果が銀メダルや銅メダルであったので、自分にとっては納得のいく結果であり、喜んでそれを受け入れたいということだったのでしょう。

晴れやかな表情でそうコメントする選手たちを見ていると、オリンピックに向けて、やるべきことは全て妥協せずにやり尽くした壮絶な準備プロセスがあったことが感じ取れます。

一方、悲願のオリンピック金メダルを獲得した女子ソフトボール日本チームのエース上野選手は、「金メダルを獲りたい気持ちは、私が一番強かった。」とコメントしていました。これは、オリンピックに向けての練習時のみならず、大会中も「絶対金メダルを獲ってやる」という強い気持ちをモチベーションにして連戦連投していたということなのでしょう。もしもアメリカとの決勝戦に負けていた場合、上野選手からは「私にとっては金色です。」とのコメントは絶対聞かれなかったでしょう。まさに、上野選手にとっての一番きれいな色は、金色だったのです。

五輪選手を鼓舞しつつも、平常心を保たせてあげられる、とても素晴らしい歌だったと言えるのではないでしょうか。

ロンドンでも、このようなメッセージ性の強い影響力のある五輪テーマソングを期待しています!

※「TSUテニス部年報(№4)“‘08リーグ戦を前にして思うこと”」を修正・転載

2011/07/29

#185  ロンドンオリンピック(2012)に向けて (1)

ロンドンオリンピック(2012)が、2012年7月27日~8月12日までの17日間の日程(現地時間)で開催されます。……ちょうど1年前になります。……今度は、どんなオリンピックになるのでしょうか……

Terry は東京オリンピックの年に生まれましたが、オリンピックについての記憶の始まりは、1972年札幌オリンピックと同年のミュンヘンオリンピックでした。……当時の日本は、スキージャンプ、体操競技など“お家芸”があり、子供ながら「日本のスポーツは凄い!」と思わせてくれていました。

まさか、数十年後にスポーツ政策の研究、特に競技力向上政策関連を“研究第一テーマ”にしているとは……Terry 少年にとっては想像もつかなかったと思います。

オリンピックについては、書きたいこと、書けることが幾つかあります!……ということで、本シリーズを設けることにしました。

今回はどんな曲が流行るのだろう……北京(2008)は ○○○ だったなぁ……(つづく)

2011/07/28

#184 スポーツ法ニュース (第6号)

「スポーツ基本法」関連情報②

文部科学省のウェブサイトの「スポーツ基本法」関連情報がアップされていました!
 ※以下、追加されていた項目です。

 スポーツ基本法の施行期日を定める政令(平成23年政令第231号)(条文)
 スポーツ基本法施行政令(平成23年政令第232号)(条文)
 スポーツ基本法施行令新旧対照表
 主な検討経緯
 関連提言
 国会における審議経過
                       ※2011年7月28日現在

Memo  (by Terry)

『スポーツ基本法』関連
 ① 2011年8月24日から施行 
 ② 文部科学大臣 → 中央教育審議会へ諮問
     ・スポーツ振興基本計画策定等について
     ・スポーツ団体への補助金交付ついて

素朴な疑問ですが……「基本法」に基づき「政令」が制定され、「政令」で定められた「施行期日」に「基本法」の効力が生じる、また、「政令」は「基本法」の施行の日から施行される……「基本法」はニワトリ or タマゴ ? ……法律はややこしい!

2011/07/27

#183 カナダ・スポーツ政策ウォッチ (5)

カナダ下院に“スポーツ関連法案”が提出(6/22)されました!

Bill C-252:
    An Act to amend the Income Tax Act (physical activity and amateur sport fees)
   ※1st Session, 41st Parliament, 60 Elizabeth II

ピーター・ストファー下院議員(ノバスコシア州サックビル-イースタンショア選挙区、新民主党)が議員立法(Private Member’s Bill)として提出した法案で、身体活動やアマチュアスポーツをするために支払った費用(年度総額)について所得税控除を認めるように「連邦所得税法(Income Tax Act)」を改正するというものです。……例えると、Terry と妻 Peach が某スポーツクラブに毎月支払っている会費(17,400円)の年間総額(約21万円)が所得税控除できるようにするための“所得税法改正法案”です。

調べたところ、ストファー氏は過去にも類似の法案を数回提出していますが、第二読会まで進んだのが最高で、いずれも廃案になっているようです。彼のライフワークなのでしょうか?

ただし、5月の総選挙前に、ハーパー首相が「成人フィットネス税額控除(Fitness Tax Credit for Adults)」の導入について発言していることもあり、多少、以前とは状況が異なってきています。

なお、カナダには「児童フィットネス税額控除(Children's Fitness Tax Credit)」があります。

2011/07/26

#182 カナダ・スポーツ政策ウォッチ (4)

Special Olympics Canada への補助金が増額される!

カナダ連邦政府は、スペシャルオリンピックス(知的発達障がいのある人たちのスポーツ)のナショナルプログラム(国内本部組織)である「スペシャルオリンピックス・カナダ(Special Olympics Canada:SOC)」への補助金(2011-2012年度)を80万カナダドル増額し、約300万カナダドル交付することを発表しました。(2011/6/17)

これは、2011年6月25日から7月4日までアテネで開催された「スペシャルオリンピックス夏季世界大会」への選手派遣費用を考慮したものです。なお、2010-2011年度のSOCに対する補助金は、約247万カナダドル交付されていました。

カナダでは、今年度、SOCに約2億4,900万円の補助金が交付されることになります。

※1カナダドル=83円で換算

2011/07/25

#181 カナダ・スポーツ政策ウォッチ (3)

今年も "Sports Day in Canada" が開催(9/17)されます!

「カナダ・スポーツデー(Sports Day in Canada)」は、カナダ全土を巻き込む“スポーツイベント”で、2010年から始まりました。日本の「体育の日イベント」に相当するものですが、それとは比較にならない程の“凄~い”イベントのようです。……日本の行政主導のイベントとは異なり、カナダ・スポーツデーは民間主導のイベントです。……関連する数多くのアイディアは、とても参考になります。……世界屈指の“スポーツデー”かもしれません!

「ParticipACTION」「True Sport」「CBC Sports」の主催で、各地域でのイベント等は中央競技団体やそれらのネットワーク(コーチ、選手等)等からなる組織、地域またはイベントごとの実行委員会によって企画・運営されます。

本シリーズで紹介できるような単純なイベントではありませんので、余力があればSMJブログ内でシリーズを設けたいと思います。関心のある方は、カナダ・スポーツデーのウェブサイトを直接ご覧ください。(http://sportsday.cbc.ca/home)

なお、関連企画として「Jersey Day - Friday, September 16」があり、また、主要テーマとして「The power of sport」が掲げられています。……おそらく、9月16日(金)はカナダ中の職場、学校等で運動着(ジャージー)姿の人々が見られることでしょう!

2011/07/24

#180 カナダ・スポーツ政策ウォッチ (2)

今年度の Athlete Assistance Program の交付総額が決定!

カナダには、連邦政府が民族遺産省スポーツ局(Sport Canada)を通じて、世界水準のカナダ人競技者に直接資金提供する「競技者援助プログラム(Athlete Assistance Program:AAP)」があります。

AAP とは、カナダ人アマチュアスポーツ競技者がそれぞれの学業上および職業上の目標達成を諦めることなく国際競技大会で優秀な成績が収められるように、連邦政府が競技者に対して補助金(grant)を交付するプログラムです。

シニアレベルの競技者には月額1,500カナダドル(年間18,000カナダドル)、育成レベルの競技者には月額900カナダドル(年間10,800カナダドル)が交付されます。日本円に換算すると、前者には月額124,500円、後者には月額74,700円が交付されます。

2011-2012会計年度の AAP の交付総額は2,670万カナダドル(22億1,610万円)で、1,800人超の競技者への補助金交付が予定されています。なお、障害(physical disabilities)の有無によって異なる基準はありません。

※資料:スポーツカナダ「News Releases / Statements (2011-07-14)」
※1カナダドル=83円で換算

2011/07/22

#179 カナダ・スポーツ政策ウォッチ (1)

新・スポーツ担当国務大臣(Minister of State (Sport))誕生!

文科省の報告書執筆が一段落していたり、TSU インターンシップ派遣関連業務にエネルギーを割かれていたため、かなり油断していました。……カナダ研究をされている方から怒られてしまいます!

気がついたら“カナダ下院総選挙”が終わっていました。2011年中にはあるだろうと報告書にも書いておきましたが、5月2日(月)に投開票が行われ、ハーパー・カナダ首相率いる保守党が過半数を獲得し、勝利していました。

そして、5月18日にカナダ連邦新内閣が発足し、新しいスポーツ担当国務大臣(Minister of State (Sport))が誕生しました。バル・ゴサル下院議員(The Honourable Bal Gosal)です。ゴサル氏は今回の下院総選挙でオンタリオ州ブラマリー–ゴール–モルトン(Bramalea–Gore–Malton)選挙区から初当選し、初入閣を果たしました。

カナダ・スポーツ政策上の影響については、前スポーツ担当国務大臣の私的諮問組織であったOwn the Podium の位置づけが、新大臣誕生によってどうなるかが気になるところです。……おそらく、引き継がれると思いますが……

2011/07/21

#178 スポーツ政策:独論 (5)

久しぶりに、独論を吐きます! ※独論とは#100で説明してあります!

将来、大学教員になりたいのなら…

ドクターを取ることですねぇ……と言いたいところですが、Terry はそう思いません!……でも、あるに越したことはないですねぇ……オイ、コラッ、どっちやねん!

7月18日・19日に妻 Peach と“北軽井沢”に行ってきました。オテンバ娘 Kaena は幼稚園のお泊まりで湯沢に、ワンパク坊主 Saint は実家に預かってもらい……久しぶりの夫婦水いらずでした。

北軽井沢は、大学時代はテニス部の合宿で、大学院時代~数年前までは恩師 Knob 先生の研究室の夏季研究合宿で汗を流した“思い出”の場所です。……この“汗”の意味、お分かりになりますでしょうか?……そう言えば、大学院2年目の時、学会事務局のお手伝い他のストレスで“十二指腸潰瘍”になったこともあったなぁ……

“研究”だけで飯を食える大学教員はほとんどいないと思います。教育(授業、学生指導)のみならず、各種委員会の仕事、学会の仕事、学会誌の編集、論文の査読、社会貢献活動などがあり、TSU のような大学では、定員確保に資するプラスアルファの取組もしなければなりません。

Terry の考える大学教員の資質として、若い時にどれだけ汗をかいた経験があるか、そして、大学教員になってどれだけ汗がかけるかを、第一に挙げたいと思います。……ドクターの有無は二の次です!……Terry が偉くなったら、そうします!……偉くならなかったら、どうしましょう……ただし、研究能力もないとダメですけど……

軽井沢のアウトレットで“OAKLEY(オークリー)”のサングラス(キズ有)他を買ってしまいました。……44,000円が16,537円でした!

Terry Bird です!
独論です。

2011/07/20

#177 スポーツ政策ニュース (第10号)

今年の学会大会にカナダ人研究者を招聘します!

Terry は英語が苦手です……が、研究のためには避けて通ることができず、日々目の前の英語上の課題を処理し続けています。……現在抱えている課題は、カナダ人研究者を下記学会に招聘するための“英文メール”のやりとりです。

★日本体育・スポーツ政策学会第21回大会
    ・日程:12月3日(土)  ・会場:TSU

ここ数年、学会大会の「基調講演(keynote address)」に外国から研究者・関係者を招聘することが恒例になっています。

 2008年 イギリス
 2009年 フランス
 2010年 韓国
 2011年 カナダ ※予定

詳細は、学会ウェブサイトで公表後、SMJブログでも紹介します。

当日の「午後プログラム(基調講演、シンポジウム)」は一般公開しますので、関心のある方は是非お越しください! ※資料代:500円(予定)

2011/07/19

#176 スポーツ政策ニュース (第9号)

『スポーツ政策調査研究報告書』はどこで入手できるか?


SSFから文科省に納品された“現物”は数百冊しかないので、よほどの関係者でない限り入手は困難だと思います。……執筆者としての恩恵を被り、Terry のもとには1冊贈っていただきました!……電話帳みたいですが……

では、どうすれば入手できるのかと言いますと、SSFからの情報では、1ヶ月後を目途に文科省とSSF双方のウェブサイトで何らかの形で公開されるとのことです。

この調査研究に一部参画した者が言うべきことではありませんが、“歴史的な報告書”だと思います。……ただし、報告書の作製はゴールでなく、これをどのように日本のスポーツ政策に反映していくかが、今後の課題であると言えます!

2011/07/18

#175 スポーツ政策ニュース (第8号)

スポーツ振興に関する特別委員会(第1回)の開催

SMJブログは文部科学省の広報の場ではありませんが……標記委員会が2011年7月25日(月)10時~12時に開催されるようです。

以下、スポーツ政策・行政に詳しい方には“釈迦に説法”になります。……(英文では Teach your grandmother to suck eggs. のようです!)

昔でしたら、文部大臣の諮問機関と言えば「保健体育審議会」(略して、「保体審」)でしたが、中央省庁等改革の一環として、他の審議会とともに「保体審」の機能は、2001年1月6日付けで「中央教育審議会」(略して、「中教審」)に整理・統合されました。……現在、「スポーツ・青少年分科会」が旧保体審の機能を果たしています。

同分科会には次のような部会、委員会等があります。(※文科省HPより)

 ● スポーツ振興投票特別委員会
 ● 食に関する指導体制部会
 ● スポーツ振興小委員会
 ● 学校健康・安全部会
 ● スポーツ振興に関する特別委員会
 ● 青少年教育特別委員会
 ● 青少年の体験活動の推進の在り方に関する部会

第1回会議(7/25) の議題です。

 委員長の選任等
 スポーツ基本法について
  スポーツ振興基本計画の達成状況と課題について

Terry Bird として“傍聴”にでも行ってみようかなぁ…

2011/07/17

#174 スポーツ政策ニュース (第7号)

祝 刊行! 『スポーツ政策調査研究報告書』


概要:
 書名 文部科学省委託調査 『スポーツ政策調査研究』 報告書 (平成23年7月)
 著作権者 文部科学省 スポーツ・青少年局
           スポーツ・青少年企画課スポーツ政策企画室
 発行元  公益財団法人 笹川スポーツ財団
 全583ページ
    Ⅰ 諸外国におけるスポーツ振興施策等に関する調査研究 pp.5-426.
       イギリス ・ ドイツ ・ フランス ・ イタリア        
       スウェーデン ・ デンマーク ・ アメリカ ・ カナダ
       オーストラリア ・ ニュージーランド ・ 韓国 ・ 中国 
    Ⅱ 国内におけるスポーツ振興施策等に関する調査研究 pp.427-563.
    Ⅲ 資料編 pp.565-583.

思い起こせば、本調査研究でカナダ現地調査(2011.1.23~1.30)に行かせていただいたことが、「Sport Matters JAPAN」スタートのきっかけでした。……もちろん Terry が、カナダ (pp.274-310.)を担当(執筆)してま~す!

2011/07/16

#173 カナダ・スポーツ政策に学ぶ (6)

ショットガン(shotgun)かライフル(rifle)か?~その5~

「カナダ・スポーツ政策に学ぶ」というシリーズの趣旨は、SMJブログ#168に書いてありますのでご確認ください!

 Terry は何を学んだか?

カナダ・スポーツ政策史研究上“1968-1972年”期の研究は意義深い。
ショットガン・アプローチとライフルアプローチはマーケティング・マネジメント用語である。
アメリカの経営学者フィリップ・コトラー(Philip Kotler)が、②の提唱者かもしれない。

そこで、

①については、なるべく早い段階で研究してみたいですが……今のところ、余力が……
②③については、何故かもう少し調べてみたいという欲求が湧いてきました!

…で、大枚をはたいてアマゾンで注文してしまいました!!!

★コトラー&ケラー『マーケティング・マネジメント(第12版)』
  (Pearson Education Japan for JP、2008年、8,925円) 

ついでに、『たまごっちiDL もりもり育成ブック 』も注文してしまいました…

2011/07/15

#172 カナダ・スポーツ政策に学ぶ (5)

ショットガン(shotgun)かライフル(rifle)か?~その4~

1968年~1972年の時期は、カナダのスポーツ政策において“変革の時代”として位置づけられています。……その後のカナダのスポーツ政策の在り方が方向づけられたとともに、関連する制度的枠組みの基礎が構築されました。……詳細は別の機会で紹介しますが、何となくイメージしていただけるように要点のみ書きます。

1. 審議会(NAC)の役割の変化
   → 準執行機関的位置づけから、本来の諮問機関に戻る。
   → 連邦政府(担当部局)がイニシアティブを発揮するようになる。

2. フィットネス・アマチュアスポーツの必要性の再定義と具体的方策の提言
 (a) 特別調査委員会報告
 (b) P.S.ロス報告
 (c) モンモランシー委員会
 (d) ジョン・ムンロ大臣による2つの政策声明

3. 独立組織等の創設
 「カナダコーチング協会」「スポーツ・パティシペーション・カナダ」
 「カナダスポーツ医学会」「ホッケーカナダ」
 「スポーツ・レクリエーション中央管理センター」

4. 特徴
 (a) 連邦政府のフィットネス・アマチュアスポーツ分野への関与の高まり
 (b) 全国的及び国際的に意義のあるプロジェクトの増大
 (c) レクリエーション及びフィットネスの強調
 (d) エリート競技者、学生競技者等の個人への支援の始まり
 (e) 担当部局の強化(2課の設置)
    「スポーツカナダ」
    「レクリエーションカナダ」

カナダにおいて、この4年間は“ライフル・アプローチ”の時期と特徴づけられました! 
……すなわち、フィットネス・アマチュアスポーツ分野における連邦政府の関与の在り方が明確化され、政策に対応した施策等をピンポイントで打ち出そうとされた時期だったのです。(つづく)

2011/07/13

#171 カナダ・スポーツ政策に学ぶ (4)

ショットガン(shotgun)かライフル(rifle)か?~その3~

「フィットネス・アマチュアスポーツ法」(以下、1961年法)の執行及び関連施策の実施過程を研究するための史料として、Terry はフィットネス・アマチュアスポーツ担当部局の Annual Report 他を収集しました。……SMJブログで度々紹介している Library and Archives Canada (国立図書館・公文書館)で、コピーしまくりました!

1961年法は“政治的な必要性の認識”のもと制定されたこともあり、当時、誰も同法に基づくフィットネス・アマチュアスポーツ関連プログラムの実施方針についての明白な考えを持ち合わせていなかったようです。……要するに、500万カナダドルを1961年法の趣旨を踏まえて効果的に活用する方針、考え方等がなかったと言えます。

そのため、1961年~1967年の期間、“全国フィットネス・アマチュアスポーツ諮問審議会(NAC)”“担当部局(Directorate)”は、政府内外からの求め(提案)に応じて、皆に気に入られるように補助金等を配分することになりました。……すなわち、求められるがままに、散弾銃的に関連プログラム等への資金提供がなされた期間であり、この期間は“ショットガン・アプローチ”と特徴づけられました。

以下は、この期間の関連プログラムです。……NAC と 担当部局の役割の違いはありますが、省略しま~す!

(a) 中央競技団体(NSO)等への補助金
(b) 連邦-州間費用分担協定
(c) 研究支援
(d) 奨学金
(e) 教育・啓蒙資料作製

2011/07/12

#170 カナダ・スポーツ政策に学ぶ (3)

ショットガン(shotgun)かライフル(rifle)か?~その2~

カナダにおいて1961年に制定された「フィットネス・アマチュアスポーツ法(The Fitness and Amateur Sport Act)」はどのような法律だったかと言いますと……

正式名称
 フィットネス及びアマチュアスポーツを奨励する法律
 (An Act to encourage fitness and amateur sport)

内容
 第1条(略称)、第2条(解釈)、第3条・第4条(目的・権限)、第5条・第6条(連邦-州間費用分担協定)、第7条~第9条(全国フィットネス・アマチュアスポーツ諮問審議会)、第10条~第14条(雑則)

特徴
 同法第10条で、一会計年度中総額500万カナダドルを超えない金額がフィットネス・アマチュアスポーツ関連に支出できることが規定された!

目的
:カナダにおけるフィットネス(健康づくり)及びアマチュアスポーツを奨励、振興及び発展すること!
 ① アマチュアスポーツへの参加向上のための援助
 ② 指導者養成
 ③ 指導者・研究者養成のための奨学金・研究費の支給
 ④ フィットネス・アマチュアスポーツに関する調査・研究の企画・援助
 ⑤ 関連する全国・地方会議の企画
 ⑥ 表彰・顕彰
 ⑦ フィットネス・アマチュアスポーツ情報の提供
 ⑧ 関係団体との連携
 ⑨ 連邦政府内(省庁間)の活動調整
 ⑩ フィットネス・アマチュアスポーツ関連プロジェクトへの取組み
 ⑪ フィットネス・アマチュアスポーツ関連機関・団体等への補助金交付

……端的に(少々乱暴に)言ってしまうと、連邦政府からの資金提供を求めるスポーツ関係団体の働きかけにより成立した“スポーツ法”でした。……(つづく)

2011/07/11

#169 カナダ・スポーツ政策に学ぶ (2)

ショットガン(shotgun)かライフル(rifle)か?~その1~

目の前の課題を解決しようとする時、あなたはショットガン(shotgun)またはライフル(rifle)のどちらを用いるタイプでしょうか?

例えば、「あるイベントで150人を集める!」というノルマが提示された時、あなたはどういった手法でアプローチし、結果を出そうとするでしょうか?……手当たり次第に、あるいはピンポイントに?

カナダでは、1961年に「フィットネス・アマチュアスポーツ法」が制定されました。…同法の成立過程研究の中で明らかになった、同法成立の政治的・社会的・スポーツ的背景についてはSMJブログ#39~41で解説済みです。

そして、同法の執行及び同法に基づくプログラムの実施過程について調べている最中に、Terry は“ショットガン・アプローチ”“ライフル・アプローチ”という考え方に出会いました。

マーケティング・マネジメントの分野では、知っていて当たり前の“考え方”のようですが…
 (つづく)

2011/07/10

#168 カナダ・スポーツ政策に学ぶ (1)

Terry Bird という男 …… 多分、ポジティブ人間です。……この性格は“一長一短”なのですが……自身の経験を“知恵”や“発想”に転換する姿勢が旺盛だと、自己分析しています。

TSUの“健康・スポーツ心理学科”『ポジティブ心理学』という領域を柱の1つにしています。……ポジティブになりたい方は、どうぞTSUへ!

さて、SMJブログ“新シリーズ”です!

カナダのスポーツ政策研究を通じて、Terry は多くのことを学んでいます。……もちろん政策・施策そのものから学ぶことは多いのですが、埋もれるほどの資料を読み込んでいく過程で、研究上関係のない事柄について学ぶことも多々あります。新シリーズ「カナダ・スポーツ政策に学ぶ」では、主としてその後者について書かせていただきます。

第一弾は、以下のテーマで展開していきます。

 ショットガン(shotgun)かライフル(rifle)か?

お楽しみに!

2011/07/09

#167 大学教育・雑感 (13)

一昨日(7/7)、Coach K さんのマネジメントにより、TSU歓送迎会が某料亭!? で催されました。Terry は会計係を担当しました。……就任以来、全教(職)員に声掛けして催された“懇親会”は今回で3回目だと思います。

組織を良くするため、さらに組織のパフォーマンスを高めるためには、①チームワーク、②リーダーシップ、③フォロアーシップが重要な要素だと考えますが、それを機能的にするためには構成員間の強い凝集性が不可欠です。

今回のイベントが、そのようなことにつながっていけば…と期待します。

最近、さらに忙しくなってきました……首が回りません……でも、借金じゃないですよ!

2011/07/06

#166 スポーツ法ニュース (第5号)

「スポーツ基本法」関連情報①

文部科学省のウェブサイトに「スポーツ基本法」関連情報が続々と公開されています。

 スポーツ基本法(平成23年法律第78号)(条文)
 スポーツ基本法の公布について(通知)
 スポーツ基本法のあらまし
 スポーツ基本法新旧対照表
 スポーツ基本法案提案理由説明
                       ※2011年7月6日現在

Memo  (by Terry)

『スポーツ基本法』
 第177回国会(常会)において平成23年6月17日に成立
  平成23年6月24日に「平成23年法律第78号」として公布
 公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行

成文法の効力は施行の時から生じますので、「スポーツ振興法」(昭和36年法律第141号)は、まだ生きてま~す!
 

2011/07/05

#165 スポーツ政策ニュース (第6号)

文科省『スポーツ政策調査報告書』について

Terry が、文部科学省「スポーツ政策調査研究」諸外国調査委員会の委員を務め、“カナダのスポーツ政策”部分を担当(執筆)した標記報告書が、近日中に文科省から公表されます。……歴史的な報告書だと思います。……世界的にみても、このような報告書を取りまとめた例はないのではないでしょうか……

報告書の姿は、公表前と言うこともあって、明らかにすることはできませんが……とんでもない報告書です!……と、Terry は「目次」を見て感じました。

昨晩、最後の著者校正を終え、SSF担当者に送信しました。

現地(カナダ)でのヒアリングの際、その趣旨とともに12カ国の調査であることを説明すると、カナダのスポーツ関係者からは、決まって“Wow(ワオッ)!”と驚かれました。

2011/07/04

#164 TSUテニス部指導記録 (3)

対抗戦: TSU vs 千葉大学(B) 試合結果

      複  0-2
      単  1-4 
      計  1-6 ● 

千葉大学は関東大学テニスリーグ男子第4部に所属する強豪校です。昨日は、Bチームの皆さんが対戦相手になってくれました。写真は、開会式の模様です。

TSU 対 千葉大学(B)  開会式 (2011.7.3) 
どちらがTSUか一目瞭然ですよね。……千葉大チームは、さすが伝統のあるまとまった、レベルの高い競技集団でした。……1~2年生チームで臨んだTSUは、全ての面で劣っていました。……しかし、我がチームにとっては意味のある敗戦でした!

また、ゼロからチームを作っていきます。

Terry は、何度かチーム作りを手掛けてきましたが、以前との違いはOB・OGの力が借りられるということです。……昨日は、TSUテニス部の伝統は途絶えていなかったということを実感することができました。……数年後には、彼らの果たせなかった目標を達成して、次の目標が設定できるようにしたいです。

Terry は「スポーツ指導、スポーツマネジメント等」を、スポーツ政策研究者の“実践力”の確認の場として捉えています。……自分自身を高める場にもなっている訳です!

2011/07/03

#163 TSUテニス部指導記録 (2)

SMJブログ#65以来の“TSUテニス部指導記録”です!

本日(7/3)は、部にとって再スタートの日です。……対抗戦(※団体戦)を行います。

Terry が TSU テニス部を指導するようになってから今年で15年目です。体育会テニス部として、本格的にその基礎固めに着手しはじめたのは2003年からでした。それから部員たちの頑張りもあって、順調にチーム力を高め、所属する関東大学テニスリーグ男子第7部のシード校(ベスト16)入りまで“あと一歩”のところまで来ていました。

しかしながら、最大11人いた男子部員も、主力の集中していた学年が、卒業に伴い2年続けてゴソッと抜けてしまったため、2009年度のリーグ戦では団体戦を組めるギリギリの人数(6名)にまで落ち込んでしまい、2010年度のリーグ戦は選手不足で参加することができませんでした。……その結果、せっかく築き上げてきたものがリセットされてしまいました。

今年、新入部員が4名加わりました。全員経験者です! ……復活の予感がします!

4年生が就職活動のため、本日は大学テニスの団体戦未経験者の1~2年生だけで対抗戦に臨みます。団体戦前の準備、開会式・閉会式の仕方、エールの交換の仕方、オーダー用紙の書き方、プラクティスの仕方など細々とした指導をしなければなりません。……ひとたび伝統が途切れると失うものは大きいです。

幸いにも OB ・OG 達が集結してくれて後輩たちを助けてくれます!
……得たものの方が大きいということでしょうか……

2011/07/02

#162 回顧録:今だから話します! (1)

まず、SMJブログ#18を参照してください!
 http://sportmattersjapan.blogspot.com/2011/01/182011-onsite-survey-in-canada.html

Terry は文科省「外国スポーツ政策調査研究」のカナダを担当し、2011年1月23日から30日まで現地調査に行きました。……今だから話しますが、トロントからオタワに移動した3日目から体調を崩し、悪寒・発熱・下痢の症状が帰国する直前まで続きました。……何度トイレに行ったことか……トロントでの寒さ(-15~17度)にやられたのでしょうか……

トロント現地調査(ヒアリング3カ所)は Terry 単独(+通訳者 Naka さん)、オタワ現地調査(ヒアリング4カ所)は SSF の Max 氏(通訳兼ねる)と二人でした。

オタワ調査1日目の午前、最大の山場である「Sport Canada (民族遺産省スポーツ局)」でのヒアリングを終えた直後、体調の悪さがピークに達しました。そこで、残りの調査への影響あるいは帰国困難の事態を避けるために、不本意ですが、その日の午後の「カナダオリンピック委員会(COC)」でのヒアリングを Max 氏単独で行っていただくことにしました。……今思うと、彼がいてくれて良かったです。……もし、あの時 Terry 一人だけでしたら、そのまま強行せざるを得ず、更に悪化していたと思います。……その日の午後の数時間の仮眠により、残りの調査を何とか乗り切ることができ、無事帰国することもできたのです。

……あの時の下痢・発熱は何だったのか原因不明です。……毎日20回以上もホテル他のトイレにお世話になりました。……辛かったぁ……次回の現地調査では、体調を整えて、必ずリベンジします!

2011/07/01

#161 TSU講義ノート (4)

今日の講義 『スポーツ心理学特講Ⅰ(現代社会とスポーツ)』 の準備をしていました。

この授業は、日本体育協会の「公認スポーツ指導者資格」に関わる授業なのでテキストをもとに講義を展開しています。今回から「共通科目Ⅱ」のテキストになり、本日の講義テーマは「①社会の中のスポーツ」です。次回は「②我が国のスポーツプロモーション」です。

先ほど①範囲の要約が完了し、内容を理解しました。……とても勉強になりました。

“地域スポーツ指導者がその指導やマネジメントを通じて「参加者の満足度」を高めるとともに「コミュニティ創造」にも貢献していくことが望まれている”ということを、スポーツと社会との関わり等を踏まえてレクチャーすることになります。その他、“スポーツの政治的・経済的機能”や“スポーツ文化とスポーツ産業”についても扱います。

少し仮眠!? して、大学に行ってからパワーポイントを作ります。

なお、次回の範囲になりますが、テキストp.23の表1に「カナダ・スポーツ政策(Canadian Sport Policy):2000年」と記載されていましたが“2002年”ですので、関係者の皆様、訂正をお願いいたします!

おやすみなさい…